プロジェクト概要
関東圏の中規模自治体様。2005年に導入したSPARCサーバー(Sun/Oracle SPARC T5240)上でSolaris 10を稼働させ、Oracle Database 11gを使った税務管理・住民台帳連携システムを運用していました。
SPARCサーバーのハードウェア保守期限到来と、Solaris 10のEOL(2021年に延長サポート終了)が重なり、基幹システムの移行が急務となりました。Oracle DBの大規模ライセンスをすでに保有していたため、そのまま活用できるOracle Cloud Infrastructure(OCI)への移行を選択。
テクノスフィアはSolaris環境からOCIへの移行全工程(調査・設計・構築・データ移行・テスト・本番切り替え)を担当し、4ヶ月での移行を実現しました。
課題と解決アプローチ
- SPARCサーバーの保守期限切れ・部品調達困難
- Solaris 10のEOL(延長サポートも終了)
- Oracle DB 11g → 最新版への移行が必要
- 税務データの厳格なセキュリティ・コンプライアンス要件
- 住民台帳・税務・会計システムとの複雑な連携
- 年度末の繁忙期を避けた計画的な切り替えが必要
- OCI Bare Metal × Oracle Linux 8で再構築
- Oracle DB 11g → 19c(LTS版)へアップグレード
- OCIのOracle DBライセンス持ち込みでコスト最適化
- OCI VPN Connect で庁内ネットワークとセキュア接続
- OCI Data Guard でDR構成(東京リージョン→大阪リージョン)
- 年度末を避けた10月〜1月の工期計画
移行後のアーキテクチャ(OCI構成)
東京リージョン(メイン)
├── OCI Bare Metal BM.Standard.E4:Oracle DB 19c(Exadataライセンス持ち込み)
│ └── 税務DB・住民台帳DB・会計DB(計 850GB)
├── OCI VM.Standard.E4:Oracle WebLogic 12c(業務Webアプリ)
├── OCI Object Storage:バックアップ・帳票PDFアーカイブ
├── OCI Vault:DB接続パスワード・証明書の秘密管理
└── OCI Load Balancer:庁内端末→Webアプリ負荷分散
大阪リージョン(DR用)
└── Oracle Data Guard スタンバイDB(自動フェイルオーバー)
庁内ネットワーク → OCI VPN Connect(専用線相当のIPsec)
OCI Cloud Guard:セキュリティ監視・脅威検知
Solaris → Linux移行のポイント
Solaris固有の機能・コマンドを使っているシステムをLinuxへ移行する際、特に注意が必要なポイントをご紹介します。
- ZFSファイルシステム:SolarisのZFS(Zetabyte File System)はOracle Linux 8でも対応。ファイルシステムごとOCI Block Volumeに移行し、スナップショット機能を継続活用。
- Solaris Zones(コンテナ):Solaris Zones(非グローバルゾーン)で分離されていたアプリをLinuxのコンテナ(Docker)またはVM分離に移行。
- シェルスクリプトの互換性:Solaris sh(Bourne Shell)とbashの文法差異を修正。特に`/usr/bin/awk`と`/usr/xpg4/bin/awk`の挙動の違いに注意。
- Oracle DBライセンス移行:OCIではBYOL(ライセンス持ち込み)が可能。既存のOracle DBライセンスをそのままOCIで使用でき、新規購入不要。
- Oracle DB 11g → 19cへのアップグレード:Data Pump(expdp/impdp)を使用してデータを19cにエクスポート・インポート。事前にDB互換パラメータ・非推奨機能を調査し対応。
セキュリティ・コンプライアンス対応
自治体の税務システムは特に高いセキュリティ要件があります。テクノスフィアでは以下の対策を実施しました:
- 個人情報保護:住民・税務データは全てOCI暗号化ストレージに格納。転送時もTLS 1.3で暗号化。
- ネットワーク分離:OCI VCN(Virtual Cloud Network)でセキュリティリスト・NSGを設定。庁内ネットワーク以外からのアクセスを完全遮断。
- 監査ログ:OCI Audit ServiceでDBアクセス・操作ログを全件保存。Oracle Audit Vaultと連携し改ざん防止ログを実現。
- 脆弱性対応:OCI OS Management Serviceで自動パッチ適用。セキュリティパッチを週次で自動適用。
4ヶ月移行タイムライン
Solarisシステムのインベントリ調査、依存関係マッピング、Oracle DBライセンス確認。OCI構成設計・コスト試算・セキュリティ設計を実施。
OCI VCN・セキュリティリスト・Bare Metal構築。Oracle Linux 8セットアップ。DB 19cインストール・互換性テスト。Data Pumpによる初回テストエクスポート実施。
Oracle WebLogicアプリをOCI VMに移行・起動確認。住民台帳・税務・会計システム間の連携テスト。Data Guardスタンバイ構築・フェイルオーバーテスト実施。
2週間の並行稼働(旧Solaris+新OCI同時稼働)。全業務での動作確認後、週末夜間に本番切り替え。VPN切り替え・DNS変更・旧システム停止。切り替え完了後2週間のウォッチ期間。
移行結果・成果
(年間約480万円→0円)
(Data Guard DR構成)
バージョンアップ完了
(東京→大阪)