目次
  1. なぜ今、冠水対策に「監視の目」を増やす必要があるのか
  2. 総務省の調査に見る、冠水事故の実態
  3. 「今あるカメラ」にAIの目を足すという発想
  4. 画像認識による水位・冠水検知、実用化の動き
  5. 想定される活用シーン
  6. 実現に向けた検討課題とPoCの進め方
  7. よくある質問
  8. まとめ
本記事について

本記事は、当社のエッジAIプラットフォーム「GENBA IQ」が持つ技術要素をもとに、河川氾濫・アンダーパス冠水の検知への応用可能性を検討する技術提案記事です。GENBA IQに冠水・河川氾濫検知の導入実績はまだありません。実績があるように読める記述は含まれていません。記事中の数値は総務省の公開調査資料に基づく事実であり、他社サービスの紹介部分は各社の公開情報をもとにしています。

なぜ今、冠水対策に「監視の目」を増やす必要があるのか

近年、集中豪雨のたびに全国各地でアンダーパス(道路の立体交差部)の冠水と車両水没事故が繰り返し報じられています。短時間に想定を超える雨が降る、いわゆる「ゲリラ豪雨」では、道路管理者が通行止め措置を完了させる前に水位が急上昇し、車両が閉じ込められるケースが後を絶ちません。

総務省中部管区行政評価局の調査でも、車の水没事故の多くは「通行止めのため冠水箇所へ向かった道路管理者の職員や委託業者が、現場に到着するまでに想定を超える冠水となったこと」で発生していると指摘されています。つまり課題は「危険を知らないこと」ではなく、「危険に気づいてから、対応が完了するまでの時間差」にあります。

  • 人による見回り・パトロール——24時間・広範囲を人手でカバーするのは限界がある
  • 水位センサー式の通報装置——設置箇所の検知精度は高いが、多くは新設が前提で、設置箇所数がコストに直結する
  • 既存の監視カメラ映像——名古屋市の道路・河川監視のように、すでに公開・記録されている場所もあるが、常時「人」が見張っているわけではない
ポイント:足りないのは「カメラ」より「見張る人」

道路・河川沿いには、防犯・防災・交通監視など様々な目的ですでに多くのカメラが設置されています。しかし、その映像を人が24時間見続けるのは現実的ではありません。「映像を増やす」のではなく「映像から意味のある変化だけを人に届ける」ことができれば、既存のカメラ資産をそのまま防災に活かせるのではないか——これが本記事の出発点です。

総務省の調査に見る、冠水事故の実態

半分水に浸かったアンダーパスの入口に監視カメラが警戒の光を灯しているイメージイラスト

2018年(平成30年)3月、総務省中部管区行政評価局は「道路冠水時における事故の防止対策に関する調査」を公表しました。愛知・岐阜・静岡・三重の4県、20の道路管理者を対象にした実態調査で、以下のような具体的な数字が示されています。

項目数値
中部4県の道路冠水想定箇所数計691箇所(愛知237・岐阜138・静岡124・三重192/道路防災情報Webマップ H30.3時点)
冠水(通行止め措置)件数H27〜H29の3年間で計246件(19道路管理者管内)
うち車両水没があったもの3年間で計21件・水没車両30台
通行止めとする水位の目安多くの道路管理者で10〜20cm程度。水位センサーが検知すると担当職員へメール・電話で自動通報

この調査には、平成28年9月に愛知県清須市でアンダーパス内の車両が水没し運転者が死亡した事故、平成22年に可児市の市道アンダーパスで河川氾濫による水没死亡事故が発生した事例などが背景として記載されています。同時に、名古屋市が「道路・河川等監視情報システム」で2分ごとのカメラ画像を公表している例や、静岡市がIoT・オープンデータを組み合わせてアンダーパスの水位をリアルタイム化しようと検討している例も紹介されています。

つまり、「センサーによる自動検知」自体はすでに各地で実用化されている一方、監視カメラの映像を人手を介さずリアルタイムに"解析"する取り組みは、調査時点ではまだ限定的でした。ここに、AIカメラを組み合わせる余地があります。

「今あるカメラ」にAIの目を足すという発想

監視カメラの映像がエッジAI端末で解析され、スマートフォンへの通知につながる3ステップのイメージイラスト

GENBA IQ は、映像・音声・センサーを統合して「現場」をAIが理解するエッジAIプラットフォームです。製造業の外観検査、交通インフラの事故検知、建設現場の安全管理など、すでに複数の分野で「既存カメラ映像をリアルタイムに解析し、異常があれば即座に知らせる」という基本構造を提供しています。

この基本構造を構成する技術要素のうち、河川氾濫・アンダーパス冠水の検知にも応用できると考えられるのは次の3点です。

技術要素冠水検知への応用イメージ
既存カメラの活用RTSP等で映像取得できる一般的な防犯・ネットワークカメラに後付け可能。カメラの総入れ替えが不要
エッジAIによる低遅延解析映像をクラウドに送らず現場の端末で解析。通信が不安定な河川敷・郊外でも動作しやすい
検知から通知までの自動化異常な映像の変化を検知した際に、担当者への通知や既存の警報設備との連携を自動化できる仕組み
正直にお伝えしたいこと

GENBA IQは現時点で、製造・交通・建設・小売・物流・医療介護といった分野を主なユースケースとしており、水位や冠水を判定する学習済みモデルを標準では持っていません。河川氾濫・アンダーパス冠水を検知対象とするには、実際の現場映像を使ってゼロから検知の精度を作り込む必要があります。「今すぐ導入できる完成品」ではなく、「既存の技術基盤を土台に、新しい検知対象へ挑戦できるのではないか」という提案であることをご理解ください。

画像認識による水位・冠水検知、実用化の動き

「カメラ映像から水位や冠水を判定する」というアイデア自体は、すでに他社によって実用化が進んでいる分野です。この分野に確かな実現性があることの裏付けとして、公開情報から把握できる代表的な取り組みを紹介します。

企業・サービス概要
ALSOK「アンダーパス監視サービス」アンダーパスの冠水事故防止を目的とした法人向け監視サービス
西菱電機「アンダーパス等冠水監視通報システム」機械式電極センサーによる冠水検知と、管理者へのメール・電話自動通報、監視カメラのライブ映像による遠隔監視。大阪府内複数市や滋賀県・高知県など全国で導入実績あり
フューチャースタンダード「画像認識型河川水位監視ソリューション」セマンティックセグメンテーション技術により、量水標が設置されていないカメラ映像からも河川の水位を認識する仕組み(映像解析AIプラットフォーム「SCORER」)
丸紅情報システムズ省電力無線カメラで対岸の量水標を撮影し、クラウド上でAIが水位を推定する河川水位監視システムを構築

いずれも、電極式センサーのようなハードウェア中心の検知に加え、「映像をAIに読み取らせる」というアプローチが実運用に耐えうる段階にあることを示しています。GENBA IQが持つ「既存カメラの活用」「エッジでの低遅延解析」という強みは、このアプローチと方向性が合致します。

想定される活用シーン

アンダーパス・河川堤防・地下街入口という3つの場所にそれぞれ監視カメラが配置されているイメージイラスト

既存の監視カメラ映像を活用するという性質上、すでにカメラが設置されている、あるいは設置を検討している現場との相性が良いと考えられます。

現場活用イメージ
アンダーパス・道路の立体交差部入口付近の路面が冠水し始めた変化を捉え、通行止め判断の材料や注意喚起表示と連携
河川堤防・水門周辺すでに防犯・河川監視目的で設置されたカメラ映像に、水位上昇を捉える目を追加
地下街・地下駐車場の入口大雨時の浸水リスクがある地下空間の入口を監視し、早期の閉鎖判断につなげる

いずれのシーンも、「新たにセンサーを設置する予算・工事は難しいが、カメラはすでにある」という状況で特に効果を発揮しやすいと考えられます。

実現に向けた検討課題とPoCの進め方

「アイデアとしては成立しそうだ」という段階から実際の運用に進めるには、いくつも詰めるべき論点があります。誇張せず、現時点で想定される課題を挙げます。

  • 誤検知対策——水面の反射・波紋・雨粒によるレンズの水滴、照明変化などを「冠水」と誤判定しないためのチューニングが必要
  • 夜間・悪天候での見え方——大雨・夜間は可視光カメラの映像品質が落ちやすく、赤外線カメラ等との組み合わせを検討する余地がある
  • 「水位」という連続的な変化のしきい値化——何cmを「危険」とするかは現場ごとに異なり、既存の水位センサー基準(多くは10〜20cm)を参考にした現場合わせが必要
  • 既存の通報体制との連携設計——自治体の連絡網・警報設備・通行規制フローに、検知結果をどう組み込むかの設計

GENBA IQでは、他の用途と同様に最短2週間のPoC(概念実証)から検証を始める進め方を採っています。ヒアリング(0〜2日)、データ準備(3〜5日)、実装(6〜10日)、評価(11〜14日)という4フェーズです。冠水検知についても、いきなり本導入を目指すのではなく、まずは対象現場の実際のカメラ映像を使って「検知できるかどうか」を確かめるところから始めるのが現実的な進め方だと考えています。

よくある質問(FAQ)

Q. 「AIカメラによる冠水検知」とは、具体的にどのような仕組みですか?
A. 既存の監視カメラ・防犯カメラの映像を、エッジAI端末が現場でリアルタイムに解析し、路面の冠水や水位の上昇といった映像の変化を検知したら、担当者への通知や既存の警報設備の作動につなげる、という仕組みです。人が映像を常時見続ける代わりに、AIが「意味のある変化」だけを見張ります。
Q. GENBA IQには、すでに冠水や河川氾濫を検知した実績があるのですか?
A. いいえ、現時点でGENBA IQに冠水・河川氾濫検知の実績や専用機能はありません。本記事で紹介しているのは、GENBA IQが実際に備える「既存カメラの活用」「エッジAIによる低遅延の映像解析」「検知から通知までの自動化」という技術要素を、防災という新しい用途に応用できないかという技術提案です。実際の導入には、現場映像を用いたPoCでの検証が必要です。
Q. 既存の水位センサー式の冠水通報システムとは何が違いますか?置き換わるものですか?
A. 電極式などの水位センサーは、設置箇所をピンポイントで検知する精度と実績に優れており、置き換えを提案するものではありません。AIカメラによる検知は、すでに設置されている監視カメラの映像を後付けで活用できる点が特長で、センサー新設が難しい箇所への追加の「目」として、既存の水位センサーや通報体制と組み合わせる補完的な使い方を想定しています。

まとめ

この記事のまとめ

  • 総務省の調査では、中部4県だけで道路冠水想定箇所691箇所、3年間で冠水246件・車両水没21件が確認されており、「対応が完了する前に冠水してしまう」ことが事故の主因
  • 各地の道路・河川にはすでに監視カメラが設置されているが、その映像を常時"解析"する仕組みはまだ限定的
  • GENBA IQが実際に備える「既存カメラの活用」「エッジAIによる低遅延解析」「検知から通知までの自動化」という技術要素は、冠水検知にも応用できる可能性がある
  • ただしGENBA IQに冠水・河川氾濫検知の実績はまだなく、他社の画像認識型水位監視の実用化事例が示すとおり、現場映像でのPoCによる精度検証が不可欠
  • 既存の水位センサー式システムを置き換えるものではなく、「センサー新設が難しい場所への補完」という位置づけが現実的

テクノスフィアの GENBA IQ は、製造・交通・建設・防災といった現場で培ってきたエッジAI・画像認識の技術基盤を持っています。「自分たちの地域・施設のカメラ映像で、実際に冠水を検知できるのか」——その可能性をまず確かめたい、という段階のご相談を歓迎します。

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今あるカメラを、防災の"目"にできないか相談したい

GENBA IQは既存のカメラ・エッジAI・低遅延アラートという技術基盤を持つプラットフォームです。河川氾濫・アンダーパス冠水検知への応用は現時点で提案段階ですが、まずは現場のカメラ環境や課題感からご相談いただけます。

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