目次
  1. はじめに:PCを閉じると、AIも止まる
  2. クラウドセッションとは
  3. 魅力:PCを閉じても作業が続く
  4. 壁:クラウドから社内サーバーには届かない
  5. 結論:Gitに閉じた作業は、そもそも速い
  6. よくある質問(FAQ)
  7. まとめ
本記事について

本記事は、当社の開発業務にClaude Codeのクラウドセッションを当てはめて検討した、筆者個人の使用感です。機能の説明は2026年9月時点の公式ドキュメントに基づいています。提供プランや仕様は変わることがあるため、導入を検討する際は最新のドキュメントを確認してください。

はじめに:PCを閉じると、AIも止まる

筆者は出張や客先訪問で移動が多く、Claude Codeに作業を頼んでいる最中にPCを閉じる、あるいはシャットダウンすることが日常的にあります。Claude Codeは手元のPCで動くAIエージェントなので、PCが止まれば作業も止まります。移動のたびに「ここまで進めておいてほしかったのに」と思いながらPCを閉じる、というのが正直なところでした。

そこで気になったのが、Claude Codeのクラウドセッション(cloud sessions)です。作業を自分のPCではなくクラウド上で動かすので、PCを閉じても処理は続き、戻ってきたら結果を確認できる。移動の多い人のための機能に見えました。ところが、自分の実際の仕事に当てはめてみると、使いどころがほとんどないことがわかりました。

クラウドセッションとは

クラウドセッションは、Claude Codeのセッションを自分のPCではなく、Anthropicが管理するクラウド上の仮想マシンで動かす機能です。ブラウザ(claude.ai/code)、スマートフォンのClaudeアプリ、デスクトップアプリ、ターミナルから開始できます。作業対象はGitHubのリポジトリで、仮想マシンがリポジトリを複製し、そこでコードの修正やテストを行い、結果をブランチやプルリクエストとして返します。

似た名前の機能にRemote Controlがありますが、こちらはまったく別物です。Remote Controlは手元のPCで動いているセッションを、スマートフォンやブラウザから操作するための機能で、実行しているのはあくまで自分のPCです。違いを整理すると次のとおりです。

方式どこで動くかPCを閉じたら社内LANに届くか
ローカル(通常の使い方)自分のPC止まる届く(VPN接続中なら)
Remote Control自分のPC(操作だけ別端末から)止まる届く(VPN接続中なら)
クラウドセッションAnthropicのクラウド続く届かない

表を見ると、「PCを閉じても続く」と「社内LANに届く」を両立する方式がないことがわかります。この記事の結論は、ほぼこの表に集約されています。

魅力:PCを閉じても作業が続く

閉じたノートPCを抱えて駅のホームを歩く人の頭上で、雲の上のロボットがブロックを積み上げ続けているイメージイラスト

公式ドキュメントにも「PCを閉じてもセッションは動き続け、どの端末からでも確認・指示できる」と明記されています。移動の多い立場からすると、魅力は次の3点です。

  • 電車に乗る前に頼んでおける——作業を頼んでPCを閉じ、移動中は何もしなくてよい。到着したころには結果ができている
  • スマートフォンから様子を見られる——途中でClaudeから質問が来ても、移動中にスマートフォンのClaudeアプリから答えられる
  • 複数の作業を並行で頼める——セッションごとに独立した仮想マシンで動くので、別々の修正を同時に進められる

ここまでは期待どおりでした。問題は、筆者が普段Claude Codeに頼んでいる作業の中身です。

壁:クラウドから社内サーバーには届かない

雲の上のロボットがオフィスのサーバー室へ光の帯を伸ばすが、手前のガラスの壁で止められ、中では別のロボットがサーバーの前に立っているイメージイラスト

筆者がClaude Codeに頼む作業を振り返ると、時間がかかるものの多くは社内のネットワークにつながっていないとできない作業でした。

  • 社内サーバーを使ったテスト——社内の検証用サーバーにDockerでデプロイし、画面を開いて動作を確認する
  • 社内環境の整備——社内サーバーの設定変更、NASへの成果物の格納、社内の課題管理ツールやWikiの更新
  • 社内の機器を相手にした調査——ネットワーク機器の状態確認や、検証用の実機を使った確認

クラウドセッションが動く仮想マシンは、当然ながら社内ネットワークの外にあります。標準の設定では、通信できる相手はパッケージの配布サイトやGitHubなどの許可リストに限られており、社内の検証用サーバーやNASには届きません。社内の各種サーバーは外部に公開していないので、これは正しい設計です。セキュリティのために閉じている社内環境へ、クラウド上のAIだけ通れる穴を開けるのは本末転倒です。

公式には、Team・Enterpriseプラン向けに、自社のインフラ上で実行環境を動かすself-hosted environmentsという仕組みも用意されています。ただし、仮想マシンの分離や通信制限を自社で担うことになり、「移動中にPCを閉じたい」という個人の悩みのために構築・運用するには大がかりすぎる、というのが今回の判断です。

結論:Gitに閉じた作業は、そもそも速い

天秤の左の皿に小さなリポジトリの箱が1つ、右の皿にサーバーやネットワーク機器や工具箱が山積みになり、右に大きく傾いているのをロボットが見ているイメージイラスト

では、社内に触れずにGitのリポジトリだけで完結する作業ならどうか。記事の追加、コードの修正、単体テストの実行といった作業です。これはクラウドセッションが得意とする領域ですが、筆者の場合、こうした作業は手元でやってもそれほど時間がかからないのです。PCを閉じる前に終わってしまうか、終わらなくても数分待てば済みます。

つまり、筆者の作業は「時間がかかる作業は社内環境が必要でクラウドに出せない」「クラウドに出せる作業はそもそも短い」という二つに分かれてしまい、クラウドセッションが活きる「時間がかかって、かつリポジトリに閉じた作業」がほとんどありませんでした。機能が悪いのではなく、仕事の形との相性の問題です。整理すると次のようになります。

向いている使い方向いていない使い方
大きなリポジトリの改修や、時間のかかるテストの実行社内の検証用サーバーへのデプロイと動作確認
独立した修正を複数並行で進めたいときNAS・社内Wiki・課題管理ツールなど社内システムの操作
外部に公開されたサービスだけで開発が完結するプロジェクト社内ネットワーク上の機器や実機を相手にした調査

当社のように、社内の検証環境や実機を使った開発が中心の会社では、PCを閉じても作業を続けたいなら、作業するAI自体を社内に置くほうが筋がよいと考えています。当社では実際に、社内サーバーに常駐するAIエージェントに社内側の作業を依頼する運用をしており、その様子は出張先のVPN障害を社内のAIエージェントだけで復旧した記事で紹介しています。

よくある質問(FAQ)

Q. Claude Codeのクラウドセッションとは何ですか?
A. 自分のPCではなく、Anthropicが管理するクラウド上の仮想マシンでClaude Codeを動かす機能です。ブラウザ(claude.ai/code)、スマートフォンのClaudeアプリ、デスクトップアプリ、ターミナルから開始でき、PCを閉じても作業は続きます。作業対象はGitHubのリポジトリを仮想マシンに複製したもので、結果はブランチやプルリクエストとして受け取ります。
Q. クラウドセッションから社内サーバーやNASに接続できますか?
A. Anthropicが管理する標準の環境では、通信先はパッケージ配布サイトやGitHubなどの許可リストに限られており、社内LANのサーバーやNASには届きません。Team・Enterpriseプランには、自社のインフラ上で実行環境を動かすself-hosted environmentsという仕組みも用意されていますが、構築と運用は自社の責任になります。
Q. PCを閉じても社内環境で作業を続けたい場合はどうすればよいですか?
A. 作業を実行するマシン自体が社内ネットワークにいて、電源が入り続けている必要があります。Claude CodeのRemote Controlは手元のPCで動くセッションをスマートフォンなどから操作する機能のため、PCを閉じる用途には向きません。当社では、社内サーバーに常駐させたAIエージェントに依頼する運用も併用しています。

まとめ

Claude Codeのクラウドセッションは、PCを閉じても作業が続くという点で、移動の多い人にとって確かに魅力的な機能です。一方で、クラウド上の仮想マシンからは社内のサーバーやNASに届かないため、社内環境を使ったテストや環境整備には使えません。そしてGitのリポジトリに閉じた作業は、筆者の場合そもそも短時間で終わるため、クラウドに逃がす必要性が薄い。結果として、筆者の使い方にはあまり向いていませんでした。

持ち帰っていただきたいのは、AIエージェントの実行場所を選ぶときは「便利そうか」ではなく、自分の時間がかかっている作業が、どのネットワークの内側にあるかで判断する、という考え方です。当社では、社内の業務や開発環境に合わせたAIエージェントの設計・導入を支援しています。「うちの業務だと、AIをどこで動かすのがよいか」という段階のご相談も歓迎です。